H.I.S.の成長戦略と将来性

「旅行会社は大丈夫?」という就活生の不安に正面から答えます。コロナ後の回復軌道、ホテル事業への多角化、2030年に向けた成長戦略を解説。

安定性の根拠

旅行需要は回復した——コロナ前を超えつつある

2025年の日本人海外旅行者数はコロナ前の約8〜9割まで回復。HISの業績も2023年以降V字回復している。「旅行したい」という人間の本質的な欲求は変わらない。コロナという100年に一度の禍を乗り越えた実績は、次なる逆境への耐性にもなっている。

インバウンドという追い風——訪日外国人5,000万人時代

日本政府は2030年に訪日外国人5,000万人を目標に掲げている。HISはグローバルDMC事業でこの需要を取り込む立場にある。円安が続く間は訪日需要が高止まりする可能性が高く、HISのホテル事業・インバウンドDMCに直接プラス。

ホテル事業という安定収益の柱

旅行事業が景気変動・パンデミックに左右されやすいのに対し、ホテル事業は施設を保有する「不動産的な安定性」がある。訪日外国人の増加で高稼働が続き、HISのホテル事業は最高益を連続更新中。旅行1本足打法からの脱却が着実に進んでいる。

3つの成長エンジン

高付加価値ツアーへのシフト——「安さだけ」からの脱却

添乗員付き欧州ツアー・豪華クルーズ・グルメ旅行など、利益率の高いプレミアム商品の比率を上げる戦略。コロナ後の旅行者は「安く行く」より「良い旅をする」傾向が強まっており、HISはこの需要シフトに乗っている。

グローバルDMCの統合拡大——現地力でインバウンドを取り込む

HISGlobalDMCを2024年に設立し、海外60か国以上の現地法人のDMC機能を統合。訪日外国人向けの日本国内ツアーを海外旅行代理店に直販するモデル。OTAにはできない「現地ガイド・体験・宿泊をセットにした高品質ツアー」が強み。

旅行:非旅行=1:1化——2030年の事業ポートフォリオ

2030年目標として旅行事業と非旅行事業(ホテル・その他)の売上を1対1にする中期経営計画を策定。旅行業のリスクを非旅行事業で相殺し、「旅行会社ではなくトラベル企業」へ転換する。

2030年の事業構造

中期経営計画の方向性

旅行:非旅行 = 1 : 1 を目指す

HISは2030年に向けて、旅行事業に偏ったポートフォリオを是正する計画を持つ。ホテル事業・グローバルDMCという「旅行に依存しない収益源」を育て、次のパンデミックや景気後退にも耐えられる事業構造へ。

  • 旅行事業:高付加価値ツアー・法人MICEに集中
  • ホテル事業:国内外の直営ホテル拡充(最高益連続更新中)
  • グローバルDMC:インバウンド向け着地型ツアーの国際展開

AIで変わること・変わらないこと

変わること

  • 単純な航空券・ホテル予約はAIチャットボット・OTAが代替(すでに進行中)
  • 旅行プランの自動提案(AIが「あなたの好みに合わせたイタリア旅行プラン」を生成)
  • コールセンター対応の一部自動化——よくある問い合わせへのAI回答
  • マーケティング文章・旅行ブログコンテンツの自動生成

変わらないこと

  • 現地でのトラブル対応・緊急サポート——海外で体調を崩した時、AIではなく人間のスタッフが動く
  • 複雑な旅行の手配調整——複数国・複数交通手段・特殊なリクエストの組み合わせはまだ人間が得意
  • ホテルの運営業務全般——フロント・ハウスキーピング・施設管理は人手が必要
  • 法人MICEの企画・交渉——企業との関係構築・プレゼン・現場コーディネートは人間の仕事
  • インバウンド着地型ツアーの現地案内——「日本の魅力を語る」仕事はAIが代替しにくい

ひよぺん対話

ひよこ

AIで旅行業の仕事がなくなる?AIに旅行プランを作ってもらえる時代だし。

ペンギン

AIが旅行プランを提案するのは今でも可能になっている。ただ「旅行代理店が仕事をなくす」わけではない理由が3つある。①複雑な旅行の手配——ヨーロッパ7か国の列車パス+ホテル+現地ツアーをまとめて組み合わせるのは今もAIに難しい。②現地でのトラブル対応——フライトキャンセルやホテルのオーバーブッキングを解決するのは人間の交渉力。③ホテル運営はAIで代替不可——HISが注力するホテル事業はフロントスタッフ・清掃スタッフが必要。単純な「チケット手配業務」は減るが、人が関わる部分はむしろ「より重要な部分」に絞られていく

ひよこ

HISって30年後も存在してるの?旅行業界全体が縮小しそうで不安。

ペンギン

旅行業界全体が縮小するかどうかは議論があるけど、「旅行をしたい」という欲求は人間の本質。コロナ禍で旅行が制限された時に「行きたい」という気持ちが再確認された。30年後も旅行業は存在する——ただし形は大きく変わる。「単純な手配代行」はOTAに移行し、人間が担うのは「体験の価値を高める」仕事になる。HISはその方向でホテル事業・高付加価値ツアー・インバウンドDMCに舵を切っている。「30年後も変わらず存在する」という意味での安定ではなく、「変化しながら生き残る」タイプの会社。それを面白いと思えるかが判断基準。

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