成長戦略と将来性
CASE革命×KKR傘下での変革——富士ソフトの成長エンジンは今まさに動き出している。
安定性の根拠(なぜ潰れにくいのか)
組み込み技術者の育成力という参入障壁
組み込みソフトウェアの専門エンジニアは、「後からすぐ育てられる」ものではない。AUTOSAR・機能安全・リアルタイムOS……これらの技術は育成に数年かかる。富士ソフトは50年以上かけて積み上げた組み込みエンジニアの母集団(数千人規模)を持っており、後発競合が真似しにくい参入障壁になっている。
KKRというスポンサーの存在
2025年のKKRによる完全子会社化で、5,583億円規模の巨額投資が入った。PEファンドはリターンを求めるため、単純な「買って終わり」ではなく積極的な事業改善・成長投資を行うのが通常。富士ソフトの「技術力を活かしての成長」という投資テーマが明確であり、潰すよりも育てることに動機がある。
製造業とのロングリレーション
富士ソフトの顧客には長年継続している大手製造業が多い。一度「組み込みエンジニアを常駐させる」という形で関係が始まると、プロジェクトが数年単位で継続することが多い。安定した継続案件が売上の大部分を占めるため、突然売上がゼロになるリスクが低い。
成長エンジン
CASE革命——車の「ソフトウェア化」で組み込み需要が爆発
EV(電気自動車)・自動運転・OTA(無線ソフトウェア更新)の普及で、1台の車に必要なソフトウェア量が急増。SDV(Software Defined Vehicle = ソフトウェアで定義される車)の時代が来ると、自動車メーカーはソフトウェアエンジニアを今の数倍必要とする。富士ソフトはこの需要の受け皿として最前線に位置する。
KKR傘下での海外展開・M&A
KKRのグローバルネットワークを活かした海外の組み込みエンジニアリング会社とのM&A・提携が期待される。日本の自動車メーカーが海外生産を拡大する中、「海外現地で組み込み開発を担える」富士ソフトへの変革が今後の成長テーマ。
スマートファクトリー×IoT——製造業DXの需要
日本の製造業は工場のDX化(スマートファクトリー化)に本格投資し始めており、工場内の機器制御・IoTセンサー・エッジコンピューティングの領域で組み込み技術の需要が拡大。自動車以外の産業機器・製造装置向けの案件増加も見込まれる。
SDV(ソフトウェア定義型自動車)の時代
1台の車のコード行数の変化
- 2000年代初頭: 約100万行
- 2010年代: 約1,000万〜1億行
- 2030年代(EV・自動運転時代): 数億〜10億行以上
コード量が10〜100倍になる中、「組み込みSEが足りない」という構造的需要が生まれる。富士ソフトはこの需要の吸収者として機能する。
AIで変わること・変わらないこと
変わること
- コード生成AI(GitHub Copilot等)による定型コーディングの自動化
- テスト自動化ツールによる回帰テストの工数削減
- 形式手法・モデル検証の自動化支援
- ドキュメント生成・仕様書作成の効率化
変わらないこと
- ハードウェアと一体での安全設計・機能安全の判断
- 新しいセンサー・ECUへの対応方法の設計(経験と専門知識が必要)
- 自動車メーカーとの技術折衝・要件定義
- 組み込みシステムのデバッグ(物理的なハードウェアが絡む難解な問題)
- 機能安全審査・FMEA(故障モード影響解析)などのリスク評価
ひよぺん対話
CASEとか自動運転って今バブルじゃない?テスラとかが全部ソフト内製化したら富士ソフトの仕事なくなるの?
テスラが内製化に積極的なのは事実だけど、日本の自動車業界(トヨタ・ホンダ・日産)の動き方は違う。日系メーカーは「全部内製化」より「外部専門家との協業」を続ける傾向が強い。理由は2つ——①日系メーカーの現状のソフトウェアエンジニア数は需要に対して圧倒的に不足しており、短期間で内製化するのは不可能。②組み込み開発は「安全を担保するエンジニアリングの歴史的蓄積」が重要で、外部の専門会社(富士ソフト等)に頼むことでリスクを分散している。加えてEVだけでなく産業機器・医療機器・通信機器の組み込み需要も増えているから、自動車1業界に依存していない点も安定要因。テスラ型の完全内製化が日本の自動車産業全体に広がるには10〜20年単位の時間が必要だよ。
KKRってどんな会社なの?PEファンドって怖い(リストラするイメージ)けど大丈夫?
PEファンドの「リストラするイメージ」は昔の話が誇張されていることが多いよ。KKRは世界最大級の投資ファンドの一つで、日本での実績も多い(インテグラル、ビジョン、日立の事業など)。KKRが富士ソフトを買った目的は「技術力を活かして成長させること」——「切り売りして回収する」ではなく「価値を増やして将来売却する」モデル。価値を増やすにはエンジニアの技術力・顧客関係を守る必要があるから、大規模リストラよりも、海外展開・DX強化・M&Aで成長させる方向性の方が合理的。ただし「儲からない事業からの撤退・統廃合」はあり得る。組み込み・業務系という富士ソフトのコア事業は、KKRの投資テーマの中心なので影響は少ないはず。投資後5〜7年のサイクルで別のスポンサーや再上場を目指すので、中長期の安定性は確保されやすい構造だよ。