テルモの成長戦略と将来性

「高齢化で需要増は本当?」「AIで医療機器の仕事なくなる?」——命をつなぐ会社の30年後を考える。

なぜテルモは潰れにくいのか

高齢化は止まらない——世界中の患者数が増え続ける

心臓病・脳卒中・糖尿病は高齢化に伴って増加する疾患。日本はもちろん、中国・インド・東南アジアでも高齢化が進む。「治療に使う医療機器の需要は高齢化が続く限り増え続ける」。景気変動の影響を受けにくいディフェンシブな成長業種。

「一度使い始めると変えにくい」——顧客の粘着性が高い

病院が特定のカテーテルを採用すると、医師がその操作に慣れるため競合製品への乗り換えに高い心理的コストがかかる。テルモが大学病院・基幹病院に採用されると長期にわたって使い続けてもらえる。これが医療機器の「護城河(ハリ)」。

規制の高い参入障壁——FDA承認は中小企業には取れない

テルモの製品はFDA(米国)・CE(欧州)・PMDA(日本)の厳格な審査をクリアしている。承認取得には数年間・数十〜数百億円のコストがかかる。新興国や中小メーカーがテルモの主力製品市場に簡単には入れない仕組み。

1921年創業の老舗——100年の信頼と技術蓄積

1921年創業。体温計から始まり、輸液・カテーテルへと進化してきた歴史。「テルモ」ブランドは医師・看護師に深く信頼されている。医療機器は「安い新製品」より「信頼できる既存品」が選ばれる世界。100年の実績は最強の参入障壁。

3つの成長エンジン

心臓血管治療のデジタル化——スマートカテーテルへ

カテーテル手術にAI・ロボットが融合する時代が来る。テルモは「手術ナビゲーション」「治療データ分析」「デジタル化されたカテーテル」の開発投資を加速。世界トップクラスのシェアを持つカテーテルに、デジタル付加価値を乗せる戦略。

新興国医療インフラ——世界20億人へ輸液・注射器を

インド・東南アジア・アフリカでの医療インフラ整備需要が今後30年で急拡大。テルモは低コスト輸液バッグ・注射器の現地生産体制を整備し、医療が届かない地域への普及を進める。社会課題解決とビジネス成長の両立。

細胞・再生医療——次世代の治療を支える基盤技術

BCT(ブラッド&セル)事業がiPS細胞・幹細胞の大量培養技術を持つ。再生医療が本格化する2030〜2040年代に、テルモは「細胞を培養・保存・供給するインフラ」として不可欠な存在になる可能性。

AI・デジタル化でどう変わる?

医療機器 × AIの未来

テルモはデジタルヘルス事業を戦略の柱に据え、「AIによる手術支援」「データ活用による予防医療」「遠隔医療サポート」を進める。AIは医師やMRの仕事を奪うのではなく、より高度な医療を可能にする「パートナー」として機能する。

変わること

  • AIによる手術ナビゲーション: カテーテル手術中にAIが血管の3Dマップを生成し、最適な挿入経路を医師にリアルタイム提示
  • 遠隔手術サポート: 専門医が少ない地方病院にテルモMRが遠隔でカテーテル操作をサポート
  • 血糖予測AIアルゴリズム: CGM(持続血糖測定)データをAIが分析し、食事前に低血糖・高血糖を予測するアラート
  • 工場の品質検査自動化: カテーテルの製造ライン検査にAI画像認識を導入。微細な欠陥を自動検出

変わらないこと

  • カテーテル手術の最終判断: AIが経路を提案しても、実際に心臓の血管にカテーテルを挿入するのは人間の医師。命の判断はAIに委ねられない
  • 臨床試験・承認申請: FDA・PMDAの審査は人間が行う対話プロセス。AIでは代替不可
  • 医師・患者との信頼関係: MRが病院で築く信頼関係は人間的なコミュニケーションが基盤。デジタル化しても顔の見える関係が重要
  • 医療倫理と安全の最終責任: 医療機器の安全性判断は、法律上も倫理上も人間が最終責任を持つ

ひよぺん対話

ひよこ

AIが発達したら医療機器の仕事ってなくなる?

ペンギン

正直に言うと「AIで置き換えられるリスクはむしろ低い業種」——

AI(人工知能)が医療機器業界で変えること:
・カテーテル手術のナビゲーション支援
・血糖予測・早期異常検知
・工場品質検査の自動化

AIで置き換えられないこと:
・手術の最終判断は人間の医師
・MRが病院で築く信頼関係
・FDA・PMDAとの規制対話(法的責任は人間が負う)

むしろ「AIを使いこなせる医療機器エンジニアやMR」の価値が上がる。AIはテルモの仕事を奪うのではなく、テルモの製品・サービスを進化させるツールになる。

医療分野は「命が関わるため、最終判断を人間が行う」という社会的要請が強い。AIの自律性への規制は医療が最も厳しい分野のひとつ。

ひよこ

30年後のテルモはどんな会社?

ペンギン

予測すると——

心臓血管治療: カテーテル手術はロボット支援・AI支援がスタンダードに。テルモはデジタルデバイスと融合した「スマートカテーテル」を供給する
再生医療: BCT(ブラッド&セル)事業が心筋細胞シートや幹細胞治療の基盤技術を提供。「心臓を再生する治療」が現実になれば、テルモが中核に
新興国市場: インド・東南アジア・アフリカで医療インフラ整備が進む2050年に向けて、低価格輸液・注射器の市場が拡大
ヘルスケアデータ: 血糖測定・心臓モニタリングのデータを蓄積し、予防医療のプラットフォームへ展開

「医療機器を作る会社」から「命を守るデータとデバイスのプラットフォーム企業」へ——テルモの30年後はそういう姿になるかもしれない。

もっと詳しく知る