富士フイルムの成長戦略と将来性
フィルム消滅を乗り越えた「変革の天才」が次に狙うのは——ヘルスケア1.5兆円と半導体材料の先端化。
なぜ富士フイルムは潰れにくいのか
写真フィルム97%消滅を乗り越えた実績
主力事業が消滅する危機を経験し、それを乗り越えた企業。「変化への適応力」が組織のDNAに刻まれている。「次に何かが消えても、また変われる」——この実績こそが最大の安定要因。
ヘルスケア×エレクトロニクス×イメージングの3事業分散
医療(景気に強い)、半導体材料(デジタル化で成長)、チェキ(若者文化で復活)。どれか1つが不調でも他でカバーできるポートフォリオ。しかもビジネスイノベーション(複合機)が安定収益の土台。
バイオCDMO——参入障壁の高いストック型ビジネス
バイオ医薬品の受託製造は、一度受注すると乗り換えコストが極めて高い。GMP準拠の工場を建てるだけで数千億円。製薬会社にとって「信頼できるパートナーを変える理由がない」ため、安定的な収益源。
半導体の微細化が続く限り、先端材料の需要は拡大
EUV露光用フォトレジスト、CMPスラリーなどの先端材料は、半導体の微細化が進むほど品質要求が高まり、技術で差別化できる企業だけが生き残る。富士フイルムはその少数に入る。
3つの成長エンジン
ヘルスケア1.5兆円計画(2030年目標)
バイオCDMO(受託製造)の生産能力をデンマーク・米国工場への追加投資で拡大。AI画像診断「REiLI」を100カ国以上に展開。再生医療・遺伝子治療CDMOにも参入し、2030年に売上1.5兆円を目指す。
半導体材料の先端化——EUV時代の必需品
EUV露光用フォトレジスト、CMPスラリーで世界シェア上位。半導体の微細化が3nm→2nm→1.4nmと進むたびに材料の品質要求が上がり、技術力のある企業だけが供給できる。AI・データセンター需要の爆発が追い風。
BI事業のDX転換——「次のフィルム消滅」への備え
複合機市場の縮小に備え、ドキュメントDX・ITサービスへ転換中。AI-OCR、クラウド文書管理、サイバーセキュリティなど「紙を超えた情報管理」をソリューション型で提供。フィルムと同じ「変わる力」を発揮できるか。
AI・自動化でどう変わる?
富士フイルム × AI の未来
富士フイルムにとってAIは「医療画像を読む目」であり「半導体材料を設計する頭脳」であり「創薬プロセスを最適化するエンジン」。写真フィルムで培った画像処理技術がAI時代に再び輝く。
変わること
- AI画像診断「REiLI」: X線・CT画像をAIが解析し、肺がんなどの早期発見を支援。医師の負担を大幅軽減
- 創薬支援AI: バイオCDMOのプロセス最適化にAIを活用。培養条件の自動最適化で開発期間を短縮
- 半導体材料の設計AI: フォトレジストの分子構造設計にAIを活用し、開発サイクルを加速
- チェキのAI機能: 撮影シーンの自動認識、最適フィルター選択にAIを活用
変わらないこと
- 「技術の棚卸し」——異分野への応用を見つける創造性: フィルム技術を医療に転用した発想力は人間固有のもの
- M&Aの判断力: 「どの企業を買収し、どう統合するか」の経営判断はAIに委ねられない
- 患者の命に関わる最終判断: AI診断は補助であり、最終的な診断は医師が行う。その医師を支えるのが富士フイルム
- ブランド体験の設計: チェキの「エモさ」やASTALIFTの「信頼感」を生むブランディングは人間の感性
ひよぺん対話
富士フイルムの次の「フィルム消滅級」の危機って何?
2つ考えられる——
1. 複合機(BI事業)のペーパーレス化
売上の37%を占めるBI事業。オフィスのペーパーレスが進めば、複合機の需要は確実に減る。ただし富士フイルムBIはドキュメントDX・ITサービスへの転換を急いでいて、単なるプリンター会社からの脱却を図っている。
2. バイオCDMOの競争激化
サムスンバイオロジクス(韓国)やロンザ(スイス)が巨額投資で参入。生産能力の競争に巻き込まれるリスク。ただし富士フイルムは「品質と技術力」で差別化する方針。
富士フイルムの経営陣は「フィルムの教訓」を身をもって知っている世代。危機感は常にあると思うよ。
ヘルスケア事業って具体的にどこまで伸びる?
富士フイルムは2030年にヘルスケア売上1.5兆円を目標にしている。今は約1兆円だから5〜7年で1.5倍。
伸びしろは——
・バイオCDMO: デンマーク・米国工場への追加投資で生産能力を2倍に
・AI画像診断「REiLI」: 100カ国以上で展開中。特に新興国の医療インフラ整備で需要拡大
・再生医療: iPS細胞の大量培養技術は世界トップクラス。本格的な市場拡大はこれから
・遺伝子治療CDMO: バイオ医薬品に加えて遺伝子治療の受託製造にも参入
「医療×テクノロジー」は高齢化が進む世界で最も確実に成長する領域。富士フイルムはその波に乗れるポジションにいるよ。
30年後も富士フイルムは存在してる?
存在するし、また全く違う会社になっていると思う。30年後は——
・BI事業(複合機)は大幅に縮小。代わりにドキュメントAI・情報管理プラットフォームに
・ヘルスケアが売上の過半数に。バイオCDMO+AI診断+再生医療で「医療テクノロジー企業」の顔が強まる
・エレクトロニクスは半導体の進化と共に拡大。「次の微細化を支える材料」を常に開発
・チェキは「アナログ体験」のアイコンとして存続。NFTやAR連携で進化
「写真の会社→医療テクノロジー企業」に変わったように、30年後はさらに別の姿に。この変革に立ち会えるのは今入社する世代の特権だよ。