🚀 成長戦略と将来性——ABCマート
売上・利益ともに過去最高を更新した2025年2月期。HOKAブームの「次」を正規代理店として取りに行く。海外400店舗のさらなる拡大と、GRAND STAGEによる高単価化——成長の方程式を解説する。
なぜ潰れにくいのか——安定性の根拠
正規代理店・ライセンスという「真似できない仕入れ権」
HOKA・UGGの正規代理店契約、VANSのライセンス製造・販売権は、競合他社が簡単に取得できない独占的な権利。同じ商品を同条件で仕入れられる企業はほぼ存在しない。この仕入れ構造が営業利益率16.8%という超高収益の源泉で、値引き競争に参加しなくてもいい強靭なビジネスモデルの基礎となっている。
国内1,099店舗のネットワーク——構築に20年かかる参入障壁
全国ほぼすべての主要ショッピングセンター・繁華街にABCマートがある状態は、新規参入者が0から再現するのに15〜20年かかる。「どこでも買える」という利便性が顧客の習慣的来店を生み、売上の安定化につながる。靴専門チェーンとして圧倒的なスケールメリット(一括仕入れ・在庫管理の効率化)も競争力の源泉。
スニーカーカルチャーの恒久性
靴は日常必需品であり、スニーカーカルチャーはSNS・コンテンツを通じて若年層に根付いている。「靴を買う」という行動がなくなることはなく、むしろアパレルよりも長い着用周期で定期購買が発生する。EC全盛でも「実際に試着して買いたい靴」は実店舗の強みが発揮されやすいカテゴリー。
4つの成長エンジン
韓国326店・台湾61店を基盤に、米国・東南アジアへの展開を加速する方針。スニーカーカルチャーはグローバルで共通性が高く、日本で磨いた靴量販モデルを海外に輸出できる。海外売上は2025年2月期に1,166億円に到達し、全体の31%を占める。次の成長エンジンとして海外事業の重要性はさらに増す。
プレミアムスニーカー・限定モデルに特化した上位業態「GRAND STAGE」を都市部に展開。スニーカー転売市場・コレクター層の需要を正規ルートで取り込む。「希少性のある靴をABCマートの正規ルートで買える」という付加価値が都市型富裕層・スニーカーオタクを引きつける。
ABC-MARTのECサイトとアプリを通じたオンライン販売の拡充。「実店舗で試着・EC決済」というOMO(Online Merges with Offline)型の購買体験を整備。実店舗の強みをデジタルと組み合わせることで、Amazonや各ブランド直販ECとの差別化を図る。
シューズだけでなくスポーツアパレル・ハンズフリーシューズ(スリッポン・サンダル系)のカテゴリーを拡充。HOKAのウォーキングブームと連動したアパレル提案で客単価を引き上げ、シューズ単品買いからコーディネート提案型の販売へシフト。
「靴×EC」の行方
ABCマートとEC競争
靴のEC化は進んでいるが、スポーツシューズ・プレミアムスニーカーは実試着の需要が根強いカテゴリー。ABCマートは実店舗の「試着してから決める」価値を活かしながら、EC販売もABC-MART公式オンラインストアで並行展開。「店舗で試してECで購入・配送」というOMO体験の整備が競合との差別化策の一つ。Amazonや各ブランド直販に対しては、「正規品・正規代理店の安心感」と「専門スタッフの提案力」を武器にしている。
ひよぺん対話
HOKAのブームが終わったらABCマートはどうなるの?
「HOKAが終わってもABCマートは終わらない」のが正しい理解。ABCマートの強みは「特定ブランドへの依存」ではなく「次の売れるブランドを正規代理店・ライセンスとして早期確保する能力」。HOKAが下火になれば、次の新興ブランドとの代理店契約を結ぶ。「トレンドを先読みして正規仕入れ権を確保する」ことを繰り返してきた会社だから、特定ブランドへの依存リスクは相対的に小さい。ただし、仕入れ判断を間違えれば在庫リスクにはなる——そのリスク管理が経営の要。
Amazonで靴が買えるのに、実店舗が1,000店もある意味あるの?
靴は実はEC化率が低いカテゴリーの一つ。理由は「サイズが合わなかったときの返品コスト(送料・手間)」と「試着して決めたい心理」。特にスポーツシューズは足幅・アーチの形・用途によって最適なモデルが変わるから、専門スタッフが「この靴はあなたの足に合うか」を判定する価値が大きい。ABCマートが長年培ってきた「接客でシューズを選ぶ文化」は、Amazonが簡単に代替できない領域。ECと実店舗を組み合わせるOMO戦略で、両方のチャネルを活かす方向に動いているよ。