3分でわかるニコン
「カメラの会社」は過去の話——売上の半分は半導体製造装置。光学技術を核に変革の痛みを経た精密機器メーカー
FY2025は営業利益94%減の苦境 × AI半導体需要回復への期待
4つの事業が支えるニコン
精機事業(露光装置)が売上の主柱で、映像(カメラ)・ヘルスケア・デジタルマニュファクチャリングが続く。3Dプリンター事業は構造改革中。「光学の精密技術」という軸は全事業に共通。
3つのキーワードで理解する
「カメラ会社」は過去の話——売上の半分は半導体製造装置
ニコンと聞くと「一眼レフカメラ」を思い浮かべる人が多いが、実はカメラ(映像事業)の売上は全体の約24%にすぎない。売上の約46%を占めるのは精機事業(半導体・FPD露光装置)。スマホのCPUやメモリを作る半導体製造装置こそが今のニコンの中核事業。「光学技術の会社」という本質は変わらないが、それを使う分野がカメラから製造装置へとシフトしている。
露光装置メーカーとしては世界2位——ASMLに次ぐ存在
半導体製造の心臓部であるリソグラフィ(露光)工程において、ニコンはオランダのASMLに次ぐ世界2位のポジション。ASMLが最先端のEUV露光装置で圧倒的シェアを持つ一方、ニコンはArF液浸露光装置で競合のキヤノンと激しい争い。半導体の微細化が進むほど露光装置の重要性は増す。AI時代の半導体需要が回復すれば、ニコンの業績も本格回復が期待される。
変革の痛みと再成長——3Dプリンター減損906億円の意味
FY2026にデジタルマニュファクチャリング(金属3Dプリンター)事業で906億円の減損損失を計上し、最終赤字850億円の見込み。これはM&Aで取得した事業への過大な期待が修正された痛みだ。一方でこの構造改革により「儲からない事業からの撤退・縮小」が進み、露光装置とヘルスケアへの集中投資が可能になる。苦境の今こそ転換点という見方もある。
身近な接点 — 実はここにもニコン
あなたが使うスマホのSoCをシリコンウェーハに焼き付ける半導体製造工程で、ニコンの露光装置が使われている
スポーツ・報道・結婚式の写真撮影で使われるプロ向けミラーレスカメラ「Nikon Z」シリーズ。圧倒的な光学性能で知られる
眼底検査・視力検査で使われる機器にニコンのヘルスケア製品が採用されている。近くのクリニックにある可能性大
半導体や電子部品の製造ラインで使われる自動外観検査装置(ImageSensing事業)もニコンが手がける
ひよぺん対話
ニコンって正直カメラのイメージしかないけど、就活で狙う価値ある?
カメラのイメージは今やニコンの一面にすぎない。本当の姿は:
・売上の約46%が精機事業(半導体露光装置)
・ASMLに次ぐ世界2位の露光装置メーカー
・AI半導体ブームで需要回復への期待が高い
・ヘルスケア・医療機器分野への多角化中
ただし正直に言うと、FY2025は営業利益が前年比94%減の24億円、FY2026は3Dプリンター事業の減損で最終赤字見込み。苦境の真っ只中に入社するリスクと、変革期の会社で働くチャンスが同居している。光学技術と製造装置に関心があるなら検討価値は十分ある。
ASMLって何?ニコンと何が違うの?
ASMLはオランダの会社で、最先端の半導体製造に不可欠なEUV(極端紫外線)露光装置を世界で唯一製造できるメーカー。EUVがないとiPhoneのApple SiliconやNvidiaのGPUは作れない——それくらい重要な装置で、時価総額はかつてEUの最大手企業になったことも。
ニコンはASMLより1世代前のArF(フッ化アルゴン)液浸露光装置が主力。最先端チップの製造ではEUVが必要だが、汎用〜中堅クラスの半導体はArFで十分で、自動車・産業機器向けではまだまだ需要が続く。ニコンが弱い最先端領域と、まだ戦える中堅領域——この住み分けがニコンの生き残り戦略のカギ。
3Dプリンターで900億円以上の減損ってどういうこと?危ない会社じゃないの?
減損とは「買収・投資した資産の価値が期待を大幅に下回った」ときに計上する損失。ニコンは金属3Dプリンター(AM)事業に大きく投資したが、市場の立ち上がりが遅く、採算が取れないと判断して906億円を一括損失計上する見通し。
これは確かに痛い。FY2026は最終赤字850億円見込み。ただし:
・キャッシュは失っていない(減損は会計上の損失で、現金流出ではない)
・自己資本は約6,000億円以上あり財務的な危機ではない
・「不採算事業を切り捨てて再成長への集中を決断した」とも読める
大企業の構造改革では減損計上はよくある。「危ない会社」ではなく「変革の痛みを受け入れた会社」という見方が正確だよ。