三菱商事の仕事内容を知る

「商社の仕事」を一言で表すと「世界中の事業に投資し、経営に関与する」。10の事業グループごとに業務は大きく違うので、まず全体像→具体プロジェクト→配属の現実の順に見ていこう。

🛢️ 資源・エネルギー LNG・原料炭・銅・石油
商事の収益エンジン
🚗 モビリティ・素材 自動車・鉄鋼・機能素材
産業の縁の下
🏪 食品・S.L.C. ローソン・食品・小売
BtoC商事の象徴
🏙️ 電力・都市開発 再エネ・発電・不動産
長期成長領域

具体的なプロジェクト事例

三菱商事の「仕事」は、部門名だけではピンと来ない。ここでは実際に動いている代表的なプロジェクトを6つ紹介する。

資源・エネルギー 権益規模 数千億円

豪州 原料炭BMAプロジェクト(金属資源グループ)

豪州BHPと50/50で運営する世界最大級の原料炭事業。三菱商事の純利益のうち最大セグメントで、市況が良い時は単独で2,000〜3,000億円の利益を稼ぐ。配属されると現地BHPの経営会議に出席し、生産計画・投資判断・中国や日本の鉄鋼メーカー向け販売交渉を担当。ブリスベン駐在が多く、英語での交渉力が必須。

👤 若手の関わり方 5〜10年目で現地駐在→ 投資案件のモデリング、鉱山オペレーションの経営会議参加、市況分析。30代で副支配人・経営陣候補。
エネルギー プロジェクト規模 兆円級

カナダLNG上流プロジェクト(天然ガスグループ)

豪州・ブルネイ・マレーシア・北米・ロシア・オマーンなど世界各地のLNG権益を運営。2025年にはカナダLNGカナダが本格稼働。就活生には「LNG担当」は商社パーソンの花形キャリアとして知られ、長期案件(30〜40年)の契約交渉、現地政府対応、日本の電力・ガス会社への販売まで一気通貫で関わる。

👤 若手の関わり方 若手は需給分析・契約書レビューから始まり、7〜10年目で海外LNGプラントのオペレーター会社に出向。30代で大型案件の主担当。
S.L.C.(小売) TOB規模 5,000億円

ローソン非公開化とKDDIとの共同経営(2024年)

2024年にKDDIと共同で約5,000億円を投じローソンをTOB・非公開化。現在は三菱商事・KDDIが議決権50/50で共同経営。「リアル×デジタル×グリーン」の融合により、コンビニを起点に金融・通信・エンタメを統合する「日本版アマゾン」構想の最前線。S.L.C.グループの若手はローソン社内に出向し、商品開発・SCM・DX案件を担当。

👤 若手の関わり方 入社3〜5年目からローソン本社に出向できるケースあり。商品MDや新規事業開発、成城石井・ローソン銀行との連携企画など幅広い経験が積める。
電力 買収額 約5,000億円

Eneco買収とヨーロッパ再エネ事業(電力ソリューション)

2020年にオランダの電力大手Enecoを中部電力と共同で約5,000億円で買収。欧州での洋上風力・太陽光・ガス火力・小売電気事業を統合運営する三菱商事のEX(エネルギートランスフォーメーション)戦略の中核。日本では秋田・千葉などの洋上風力プロジェクトにも関与し、再エネ時代の成長ドライバーとして位置付けられる。

👤 若手の関わり方 オランダ・ユトレヒト駐在、欧州電力市場の価格分析、再エネ開発案件の投資判断。ESG・脱炭素・電力取引の最前線を経験できる。
モビリティ 年間販売 数十万台

東南アジア自動車販売網運営(自動車・モビリティグループ)

インドネシア、タイ、フィリピンなどASEAN諸国で三菱自動車・いすゞ・UDトラックスの総代理店として販売会社を運営。現地ディーラー網・販売金融・アフターサービスまでを垂直統合。三菱商事はこの領域で半世紀以上の実績を持ち、ASEAN域内のMaaS・EVシフトの動きにも対応を進めている。

👤 若手の関わり方 インドネシア・タイ駐在、現地販売会社の経営管理、販売戦略立案、ディーラー支援、新モデル投入調整。若手の活躍の場として人気。
素材・鉄鋼 連結売上 4兆円規模

メタルワンの完全子会社化(総合素材グループ)

鉄鋼製品流通商社のメタルワンを、2023年に住友商事との合弁から三菱商事の完全子会社に。国内鉄鋼流通シェア最大級で、自動車・建設・造船向けの鉄鋼製品を供給する。グローバル30カ国以上の拠点を統合し、EVシフト・脱炭素鋼の時代に向けた鉄鋼ビジネスの再編を主導。

👤 若手の関わり方 メタルワンに出向し、鉄鋼業界のサプライチェーン再構築案件を担当。経営企画・M&A・海外支店の立ち上げ等。

10事業グループ/4つの大きな領域

三菱商事の事業は10グループあるが、就活の配属イメージを掴むには4つの領域で整理するのがわかりやすい。

🛢️

資源・エネルギー

天然ガス / 金属資源 / 石油・化学ソリューション

商事の収益エンジン。LNG(液化天然ガス)・原料炭・銅・鉄鉱石・石油の上流権益と販売を担う。豪州BMA原料炭、豪州・北米LNG、チリEscondida銅山など、世界屈指の資源プロジェクトに権益を保有。純利益の4〜5割がここから生まれる(市況次第)。

向いている人: 地政学・マクロ経済に興味、長期的なBtoBプロジェクト、ハードな海外駐在OK。

純利益構成比
約40〜50% 三菱商事の稼ぎ頭
🚗

モビリティ・素材

自動車・モビリティ / 総合素材 / 産業インフラ

産業の縁の下を支えるセグメント。自動車販売(ASEAN)、鉄鋼流通(メタルワン)、プラントエンジニアリング、船舶、防衛など多岐にわたる。三菱自動車の筆頭株主として日産・ルノーアライアンスにも関与。EV・MaaS・脱炭素鋼など次世代産業への対応を迫られている過渡期。

向いている人: 製造業・ものづくりが好き、ASEAN圏に興味、重工業・メーカーとの接点を求める人。

純利益構成比
約20〜25%
🏪

食品・S.L.C.(生活消費)

食品産業 / S.L.C.(ローソン・ライフ・成城石井等)

BtoC商事の象徴。ローソン(KDDIと共同経営)、ライフコーポレーション、三菱食品、成城石井、伊藤ハム米久など、消費者に近い事業を幅広く抱える。食品原料の調達〜加工〜流通〜小売の垂直統合で、世界の食料サプライチェーンにおける影響力は大きい。2024年のローソン非公開化でセグメント重要度が一段上がった。

向いている人: BtoCビジネスに興味、食品・小売に関心、消費者インサイトやMDを志向する人。

純利益構成比
約15〜20% 成長領域
🏙️

電力・都市開発

電力ソリューション / 複合都市開発

長期成長領域。Eneco(欧州電力)、洋上風力、再エネ発電、ガス火力、都市開発・物流施設・REITなどを展開。中西社長のもとで「EX戦略」の中核と位置付けられ、資源依存からの脱却と脱炭素時代の収益源確保を担う。経営戦略2027では3兆円超の新規投資のうち、EX関連に最も手厚い配分を予定。

向いている人: 脱炭素・ESG・インフラに興味、長期プロジェクトをじっくり育てる志向の人。

純利益構成比
約15% 投資拡大中

※純利益構成比は市況により年ごとに大きく変動する。FY2025実績ベースのおおよその目安。

ひよぺん対話

ひよこ

三菱商事の仕事って、具体的に1日何してるの?デスクで何時間も英語の契約書読んでる感じ?

ペンギン

配属部門と年次で全然違うから一概に言えないけど、ざっくりイメージするとこんな感じ。

若手(入社1〜4年目):朝は為替・市況チェック、午前はExcelで投資案件の財務モデル作成、午後は取引先との会議(社内・社外半々)、夕方は海外拠点との電話会議(時差で夜22時まで続くことも)、夜は先輩と議事録まとめ+接待or帰宅。英語の契約書と財務モデルを読む時間は確かに多い。

中堅(5〜10年目):海外駐在。現地法人の経営メンバーとして、子会社の経営会議・現地政府との交渉・取引先との価格交渉・本社レポートライン対応などを担う。週末は客先との接待ゴルフや出張が入ることも。

30代後半以降:大型案件の主担当 or 事業投資先企業の取締役・経営陣。自分で投資案件を発掘・執行し、子会社のCEOや副社長として出向するケースも多い。

共通するのは、「ルーティン業務がほぼない」「毎日異なる相手と交渉する」「英語と数字が必須」という点。単純作業を嫌いな人には最高の環境だけど、毎日予測できる仕事がいい人には向かない。

ひよこ

配属ガチャってある?希望部門に入れる確率は?

ペンギン

三菱商事も配属ガチャは確実にあるよ。入社前に希望は出せるけど、最終決定は本社人事。10の事業グループ+コーポレート部門(経理・人事・法務など)に振り分けられるので、「天然ガスやりたい」と言っても配属されるとは限らない。ただし三菱商事の良いところはセグメント間のローテーションが比較的あること。金属資源→食品→電力と転籍するキャリアも珍しくない。「一つのセグメントで人生が決まる」のではなく、30年のキャリアの中で複数領域を経験するのが一般的。

ちなみに人気部門は天然ガス・金属資源・食品・S.L.C.、逆に「地味」と言われがちなのはコーポレート系(法務・経理)や産業インフラの中の船舶・防衛。ただし最近は「地味部門が実は安定して昇進しやすい」という逆説もあり、単純に人気=良いとも言えない。面接で「どの部門希望?」と聞かれたら、特定部門を強く主張するより、「XX分野に関心があるが、広く事業を学びたい」みたいなバランス型の答えが無難だよ。

ひよこ

海外駐在はどのくらいある?行きたくない人は拒否できる?

ペンギン

三菱商事の海外駐在は、総合職であれば入社後30年で最低1回、普通は2〜3回経験する。平均すると入社5〜8年目で最初の駐在、期間は3〜5年。駐在先は部門によって偏りがあり、資源は豪州・南米・中東、S.L.C.はアジア(中国・ASEAN)、電力は欧州(Eneco)、自動車はASEAN、という感じ。

「行きたくない」は原則通らない。総合商社は「世界中どこでも行く前提」で採用されているので、駐在辞退は事実上不可能に近い(家庭事情で一時的に調整はできる)。ここは銀行・メーカーとの大きな違いで、「海外で働きたい」という意思が持てない人は商社は向かない。逆に、若いうちから海外の経営最前線に立てるのが商社最大の魅力でもある。「英語ペラペラじゃないけど大丈夫?」という質問もよくあるけど、TOEIC860点程度あれば入社時は十分で、駐在までにビジネスレベルになれば問題ない。実務で磨く人が大半だよ。

ひよこ

ローソン非公開化って、就活生目線で何が変わったの?

ペンギン

かなり大きい変化で、三菱商事の仕事の選択肢が広がったと考えていい。

これまでローソンは上場子会社だったので「三菱商事が外から経営管理する」スタンスだったけど、非公開化でKDDIと50/50の共同経営体制に移行。S.L.C.グループの若手は、ローソン本社に出向して商品MD・新規事業開発・DX推進などを担当する機会が増えている。加えて、KDDIが持つ通信・決済・エンタメとの融合案件(Pontaポイント統合、ローソン銀行、auとの連携企画など)が動き始めており、「コンビニ×通信×金融×メディア」の統合プロジェクトという、これまでの商社にはなかった仕事が生まれつつある。

面接で「ローソン非公開化についてどう思うか」と聞かれる可能性は高いよ。答えのヒントとしては、「商社が事業会社の経営に深く入り込む時代の象徴」「リアル×デジタルの融合」「長期投資家としての三菱商事の立ち位置」あたりを自分の言葉で語れるようにしておくといい。

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